世界遺産「アランフェス宮殿」とアランフェス協奏曲
★アランフェスと作曲家ロドリーゴ
名曲「アランフェス協奏曲」でその名を世界に知られるアランフェス。盲目の作曲家、ホアキン・ロドリーゴがこの曲をつくったのは、スペイン内戦の最中。
内戦に傷ついた人々の心を癒したそのメロディーのモチーフとなったイメージが、 アランフェスの美しい離宮と庭園 です。
第二楽章でギターのカデンツアのあと、オーケストラが一斉に哀愁をおびた旋律を奏で始めると、ふいにアランフェスの町の美しく静かな佇まいが浮かんでくる。
★世界遺産「アランフェス宮殿」
「アランフェス協奏曲」は知っていても、マドリードの郊外の町、アランフェスが世界遺産であることを知らない人が意外と多い。また、ツアーで組み込んでいる旅行会社も少なく、マドリードからの日帰り旅行になることが多い。
アランフェスは、マドリードからは列車で45分、トレドからは国道400号線を北東に40数キロの、タホ川上流の緑豊かな小奇麗な街です。
アランフェスは、15世紀以降のスペイン王家の保養地で、 王宮にはカトリック両王のイサベルとフェルナンドも好んで訪れました。
ブルボン王家の時代には、 カルロス3世 が現在の王宮の両翼を、
カルロス4世 が、王子の庭園と農夫の家を完成。
カルロス4世は、プラド美術館にあるゴヤの「「カルロス4世一家」 です。
スペイン王朝の離宮を中心とした「アランフェスの文化的景観」は2001年、 スペインで36番目の世界遺産に指定されました。
アランフェス宮殿内部は、広大なヨーロッパ式の庭園があり、 石畳や乾いた大地のスペインの田舎町と比べると、大変美しく上品な感じがします。
アランフェスは小さな町ですが、全ての見どころを歩いてまわると、結構時間がかかります。
あまり時間がない場合は、機関車の形をした観光バス「チキトレン」が便利です。
5ユーロで、王宮前からアランフェスの観光スポットを、約50分で周遊することもできます。
写真好きな方には、スポットが沢山あり、あっという間に時間が経過してしまう位、見所の多い街です。
★アランフェス宮殿の見所
離宮内にある「アラブの間」 (Salón de Árabe) は、王妃の喫煙のための部屋。19世紀の中ごろ、グラナダのアルハンブラ宮殿の「二姉妹の間」を真似て装飾が施されています。
アルハンブラ宮殿では、建設当時の色彩を観ることができませんが、 ここアランフェスでは、往時のアルハンブラ宮殿の色彩を偲ぶことができます。
150ヘクタールの「王子の庭園」は、イギリス式庭園。
その庭園の東の端には、「農夫の家」と呼ばれるギャラリーがあります。
「農夫の家」は、時の王カルロス4世が、 フランスのベルサイユ宮殿に似せてつくらせた狩猟館です。
王国が滅亡に向かって転げ落ちて行ったこの時代、カルロス4世は政治を宰相にまかせ、好きな狩猟とビリヤード、時計のコレクションにあけくれていました。
1804年にフランスから運ばれた『トラヤヌスの柱時計』と呼ばれる巨大な時計も、ここに設置されています。
王宮の東側のパルテレ庭園はフランス式の庭園で、 16世紀にタホ川の蛇行を利用して、人工の島として造られました。
王宮周辺のアランフェスの町は、18世紀フェリペ6世時代の啓蒙運動の考えにより、区画整備されました。
今でも当時のままに、街路や数々の邸宅、歴史的建造物が残されています
異国情緒タップリのアランフェス宮殿と、その周辺の市街散策は、 ヨーロッパの街でも特に印象深いものです。
私たち日本人にとって、まるで異文化の世界であるアランフェスは、「夢の国の旅」として、いつまでも私たちの脳裏に深く焼きつくことでしょう。